シラー作『歡喜に寄する』讃歌(譯詞)
尾崎 喜八
歡喜よろこび、聖なる神の焔ほのおよ、
耀く面もて我等は進む。
裂かれし者等を合はす汝なが手に、
もろびと結びて同胞はらからとなる。
心の友垣、操の妻を
かち得し者等は集ひて歌へ。
おのれを憑たのみて驕れる者に、
此の世の眞まことのよろこび有らじ。
よろづの物皆、自然を生きて、
なべての人皆、光に浴みす。
友等と、力と、愛とを降す
御神の姿の在らぬ隈くまなし。
あゝ、造物主、日の神の
遙けき御空を天駈けるごと、
行け、汝が道を、勝利の道を、
勇みて、つはものの行くがごとく、
行け、我が友よ、いざ行け、友。
捧げよ、諸人、人の誠を
父こそ、ゐませ、星空の上に。
仰げよ、同胞、けだかき父を。
ひとりの父を、星空の上に。
序句 (但しシラーの作にあらず)
おゝ、友、
それならぬ、
樂しく、深く、
歡喜に滿てる歌を。
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この歌詞・訳詩を用いてレコード録音が行われたと国立音楽大学演奏80年史に記載されています。
1943年5月13日(木) レコード吹込み(日本音響株式会社)
歓喜の頌 第九交響曲終楽章
日時 昭和一八年五月十三日(木)
録音場所 日本青年館
発売 日本ビクター VICTOR JH-232-4
獨唱 香山淑子 四家文子 木下保 藤井典明
合唱 國立音樂學校 玉川學園合唱団
指揮 橋本國彦 東京交響樂団 譯詩 尾崎喜八
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写真提供者:望月ハルヒ(@HaruhiMochiduki)
※なお、この音源はYouTubeで聴くことができます。
(サイト管理人)
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望月ハルヒ氏によれば、上記の尾崎喜八訳詩・録音よりも半年ほど早く(1942年12月)、山田一雄指揮の日本交響楽団(現在のNHK交響楽団) によって録音されているとのことで、尾崎による第9訳詩は本邦初ではないとのことです。日本交響楽団による録音の訳詩は矢田部勁吉が担当。独唱者は三宅春恵、四家文子、木下保、矢田部勁吉。
※1942年録音の音源および詳細は →こちらで入手出来ます。
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